皆さんこんにちは。青果専門店とっておきやを運営する株式会社オージーフーズの最年長青果担当の杉本(2018年現在66歳)です。
愛媛県の柑橘「甘平」について、品種の特長、品種の生い立ち、お味や食感の特長などなどわかりやすく深~く解説します。また、実際に産地を訪問して甘平が栽培される様子も見てきましたよ!詳しくレポートいたします。
柑橘好きの方にぜひ知っていただきたい甘平です!とっておきの情報満載ですよ。
甘平とは
その名は体を表す「甘平」はとびきり甘くて扁平な形の柑橘!
甘平は、なんといっても特長的な名前の柑橘です。
品種名は漢字で「甘平」と書き、「かんぺい」と読みます。
形を見ると、まさに扁平と云いますか、ぺちゃっと上から潰されたような…。丸っこいみかんと比べると、平らな形をしている柑橘と云うのがよくわかりますね。「名は体を表す」と云う表現がピッタリ合う一品で、甘くて平らな柑橘だから「甘平」です。
甘平は皮が薄い!手で剥くことが出来ます
甘平の特長のひとつと云えば、皮が薄いこと!
外皮は手で簡単に剝くことが出来ます。みかんとよく似た感じですね。また、リンゴの皮むきのイメージでくるくると円を描くように手で皮を剥いてみるとよりキレイに出来ますよ。お試しください!
果肉の皮(「じょうのう」と呼ばれる薄皮)も非常に薄いので、そのままパクパクッと食べやすく、口当たりも良く美味しいと評判です。
甘平のお味は甘くてジューシーでプチプチ食感が特長
甘平のお味の特長は、甘くジューシーで、芳醇な香りを併せ持っています。
一見すると外皮は水分量が少なめに感じるのですが、皮の内側にはプリプリの甘~い果肉がタップリで驚きです!温州みかんよりやや大玉ではありますが、実の締まりがよく、薄皮の中には実がびっしりと詰まっている感じがします。
食感はプチプチとはじけるつぶ感を堪能でき、シャクシャクと実が詰まった食べ応えもあり、その上あま~い「新食感」とも云える柑橘です!
「じょうのう」と云われる薄皮ごとそのままパクッと口の中に入れると、口の中で「さのう」がはじけて、口の中に果汁がいっぱいに広がりますよ!
※「さのう」とは、じょうのうの中の実の粒々のことです。
甘平がとあるテレビ番組で紹介されて大騒ぎ!
2018年1月頃、とあるテレビ番組でとあるデラックスなタレントさんがこの甘平を「美味しいっ!」と大絶賛したため、甘平に対する注目度がいっぺんに上がってしまい…。もう瞬く間に大勢の方々が甘平を探す様相となり、産地は大騒ぎになった事も有るほどです。
テレビの力の凄さを感じるとともに、やっぱり甘平って美味い柑橘なんだなあと改めて実感したプチ事件でした。
甘平の産地はどこ
甘平は生まれも育ちも愛媛県
甘平は「柑橘大国」と云われる愛媛県で開発された品種です。
愛媛県のオリジナル品種として誕生し、現在も愛媛県のみで栽培されています。
その為、収穫量もまだまだ非常に少ないので、殆どの方がまだ見たことも無く、食べたことが無いという方の方が多い柑橘だと思います。このブログを読んでくださっている皆さんはいかがでしょうか?
「愛媛産以外の甘平ってないの?」と気になるかもしれませんが、「甘平」は愛媛県が商標登録しているため、甘平は愛媛県のものなのです。
他にもあります愛媛オリジナル品種の柑橘
また、愛媛県オリジナル品種として栽培されている柑橘と云えば「紅まどんな」です。
この「紅まどんな」はぷるぷるとした食感が楽しめる品種で、こちらも人気の新柑橘ですよ。詳しくは「紅まどんな」について詳しく解説している記事をご参照ください。
「甘平」と「紅まどんな」の取り扱いの違い
「甘平」も「紅まどんな」もどちらも愛媛県で開発されたオリジナル品種ですが、取り扱いに於いてかなりの違いが出ています。
- 「紅まどんな」の商標登録をもっているのは全農えひめです。
- 「甘平」の商標登録をもっているのは愛媛県です。個人の農家さんでも愛媛県内であれば、JAに所属していなくても「甘平」の呼称を使う事が出来ます。
甘平の生い立ち
2007年に品種登録された愛媛県オリジナルの新柑橘
甘平は愛媛県の果樹試験場で1991年の春から開発がスタートし、それから16年の年月を経て、2007年8月にやっと品種登録された柑橘です。
ここ数年は市場での人気も高まり、市場出荷も少しづつ増えて来ていますがまだまだ希少な品種であると云えます。お値段もまだチョット張りますよね…。
希少性もあり、お味も良いので、贈答品にピッタリ!とても喜ばれる逸品です。
新品種の開発ってとても大変!
新品種の開発って、労力と長い年月がかかる大変なことなのです。
甘平に限らず、各県や種苗屋さんなどで開発される事が多いのですが、一般的には別々の品種を交配させて、種子を得て、それから接ぎ木したりしながら10年以上も掛けて品種登録に結びつけて行きます。
※10年は逆に短い位で、15年、20年と掛かる事も多くあります…!
甘平の掛け合わせの両親にあたる品種は
甘平は「西之香(にしのかおり)」(トロピタオレンジ×清見タンゴール)と「ポンカン」を交配させて誕生した柑橘です。
「西之香」は清見由来のジューシーさと香り高さが特長です。そこに、甘味が強く外皮が剥き易い「ポンカン」を交配したことで、両方の良いとこ取りで、濃厚で上品な甘味を持ちながら、ジューシーで美味しい柑橘になります。
※ちなみに、トロピタオレンジは清見の親でも有ります。なんだか複雑な親子関係ですね!
さらに余談ですが…
なんと、実は甘平の両親はしばらく「西之香」と「不知火」と云われていたんです。それが2014年に愛媛県で交配品種を確認するためのDNA鑑定が行われ、まさかの真実が発覚!!
それからは、甘平の親は「西之香」×「ポンカン」であると情報が周知されました。
甘平の栽培と収穫量について
産地の方々にお伺いしたのですが、甘平は外皮が薄く、中のじょうのうも薄い事もあり、栽培上でも取り扱いに気をつかうと仰っていました。
特に夏場が問題で、天候ひとつで収穫量が多く異なってしまうそうです。
園内土壌の水分管理もとても大事で、時には直ぐに実が割れてしまう事があるとのこと。酷い時には園内の約半分近くが裂果してしまう事も有るそうですよ。それほど手間と気をつかうデリケートな柑橘なんですね。
この現象は露地栽培でよく見られますが、ハウス栽培では水分と温度、湿度を管理できるので裂果はかなり減ります。
甘平は丁寧に袋かけして栽培されることもある
特に夏場に高温が続き、その後の秋に掛けて雨に多く当たると裂果現象が多く発生してしまいます。ここで裂果せず生き残った甘平に、今度は「サンテ」と呼ばれるネット状の袋を1玉ずつ手作業で掛けて行きます。
この「サンテ」によって、退色、裂果、傷果、鳥害汚れ、寒さ等々の脅威を防いでいます。
こうやって1玉ずつ袋を掛けると云う事は、収穫時には1玉ずつ袋を取り除く作業が必要になります。これもまた大変な作業なんです。
収穫時、甘平の樹の枝にはたくさん棘状のものが生えていて、この棘が収穫作業の邪魔をしているそうです。棘も結構大きなものなので、とても大変です。
年明けの収穫時期では、鳥害と寒さが一番厳しいかもしれません。
数年前に1月後半から2月に掛けて愛媛県で大雪が降った時は、かなりの被害が出たと云われました。本当に、美味しい果物は産地の皆さんの努力の賜物です。ありがとうございます。
甘平の収穫量はまだまだ少ないからこそ希少な柑橘!
甘平の収穫量は、愛媛県だけが栽培している品種であるからこそまだまだ少なく約1,256tほどだそうです。(2014年実)
※例えば、とある統計によると、2014年のデコポンの収穫量は約46,000t超とのこと。量の比が圧倒的ですね。ケタが違います…!
これでも、ここ数年来で着々と甘平の収穫量は増えてきています。聞く処によると有る県内のJAさんでは前年より約100t位は増えて来ているそうです。多分、県内の多くのJAでもほぼ同様な位増えているのではと想像します。
…とは言っても、どうしても愛媛県内だけの栽培になるので数に限りがありますね。まだまだ希少な柑橘であることは間違いないですね!
甘平の選果基準とランク付け
甘平にも一応の選果基準が有り、それに基づいてランク付けが行われています。
商標は愛媛県が持っており、毎年年明けの出荷前には「目揃え会」が行われ、秀、優、良等の着色や、形状の規格の統一の検討会が行われます。
糖度と酸度は全量しっかりと光センサーで品質チェックを行い、出荷に備えます。光センサーでのチェックの基準は「糖度は11度以上」と「酸度は1.1%以下」を目安にしているそうですよ。
年によっても異なりますが、とくに高い時には糖度13度にもなることがあるんだとか!
最高級ランクの甘平とは
甘平の中でもとくに最高級ランクのものは「愛媛Queenスプラッシュ」と云うランクで販売されます。このランクは県の基準がはっきりしていて、3つの条件があります。
- 糖度13度以上
- 着色、形状が優れているもの
- サイズが2L~4Lサイズ
このランク付けの条件をクリアーしたものだけが「愛媛QUEENスプラッシュ」として出荷されることを許されています。このランクは甘平の中でもほんの数%程しかないと云われているほど本当にスペシャルな商品になります。
その為に1個1,000円位で販売されることも有ります!
甘平の旬の時期はいつ
甘平の最盛期はだいたい2月中旬頃がメイン
甘平が最盛期を迎える時期は大体2月中旬頃がメインとなってきます。
甘平は早いものでも1月の下旬から出荷が少しずつ始まります。それから3月の上旬か中旬位までのほぼ約1か月チョット位が旬の時期と云えます。
ハウス栽培でも、露地物でも、出荷時期はほぼ一緒なんです。正直、この時期を逃したら次は来年度まで有りません。
こんなにも食べやすく美味しい希少な柑橘は中々有りませんから、一度は召し上がってみて下さい!是非ぜひお奨めです!もし見かけたら「買い」ですよ!
2月中旬頃の柑橘事情
2月中旬となれば、人気のみかんもほぼシーズンの終盤を迎える時期になり、「早生みかん」の様にじょうのうごとパクパク行ける品種がだんだんと少なくなる頃です。
この時期に多く出荷される柑橘類は晩生種と呼ばれていて、「甘夏」「八朔」「サンフルーツ」「文旦」等の皮が比較的厚い柑橘が多くなっています。
簡単に手で皮が剥けないので、果物包丁やナイフなどで少しカットしてから皮を剥く様になります。その上、実を包んでいる「じょうのう」と云う皮が厚いので、じょうのう毎召し上がりにくく、じょうのうを出すことが多い柑橘が多いです。
そんな時期に、この甘平は手を汚すことなく、簡単に手で皮が剥け、その上じょうのうも薄いので房ごとパクパク食べるやすく、その上美味しいので、甘平はこの時期にはとてもありがたい柑橘になりますね。
この時期に同様に人気の柑橘と云えば、デコポンも有ります。「甘平」に「デコポン」は同じような条件を持っているので人気を博していますよ。
甘平のおすすめの保存方法とは
甘平の保存方法としては、ちょうど寒い2月中旬頃が出荷のピークということもあり、冷蔵庫に入れる必要はないでしょう。状態にもよりますが、直射日光を避け出来るだけ風通しの良い冷暗所で保存してください。
保存の目安は4、5日位から1週間位を目安にしてください。果物は「なるべく早く食べる」が美味しい鉄則なので、あくまで目安までに…。
もし冷蔵庫で保存する場合は、乾燥しない様にポリ袋などに入れて野菜室で保存してください。または、こちらのブログ記事も参考になるかと思います。
あとがき
- 甘平とは愛媛県オリジナルの柑橘
- 甘くて平らな形が特長的な柑橘
- 甘くて、食べやすくて、美味しい!生産量が少ないため希少なとっておきの柑橘
今回のブログ記事では「甘平」という柑橘についてご紹介いたしました。
やはり私のお客様でも、初めてこの名前を聞いた時は「何そのみかん?」と不思議そうに思われるんです。そして、皆さん一口お召し上がりいただくと甘平の美味しさにビックリ!
すっかりリピーターになってしまう方が多数いらっしゃいます。もちろん、弊社のスタッフからも「個人的に甘平を注文したいから忘れないで」と前もって念押しされているほどです。
また、新入社員の子たちにも甘平の話をするとやっぱり興味津々のようで、はやく実物を見せてあげたいなあと思っていますよ。
これからもとっておきの青果物の話題でブログを更新します。
どうぞお楽しみに。
本日も最後まで記事をお読みいただき、誠にありがとうございます!
杉本
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